2022年11月11日

ダイナトロン 環境 2022.11

持続可能な航空燃料 SAF

出張、貨物輸送などの航空機利用によって排出される二酸化炭素の量は、人間活動全体のおよそ2~3%を占めています。

そこで、二酸化炭素の排出量軽減の取り組みとして登場したのが、化石由来の原料を使用しない
Sustainable Aviation Fuel 「SAF」です。

持続可能な原料から製造されるSAFは、従来使われてきた化石燃料と比較して、これまでより二酸化炭素排出量
の約80%を軽減することができます。
世界の航空燃料の需要に対して、現在のSAFの生産量が占める割合はわずか0.03%です。
急増する需要に、供給が追い付いていない現状です。
日本の商社と、石油元売り大手企業は、SAFの生産と販売に共同で取り込むことに合意しました。

・SAFの原料
現在、SAFの原料となる物は、主に植物などのバイオマス由来原料や、飲食店や日常生活での廃棄物・廃食油
などで製造されています。
化石燃料は、使用サイクルにおいて一方的に二酸化炭素を排出するだけで、リサイクルできないものでした。
SAFの主な原料となる植物は、二酸化炭素の一方的な排出だけではなく、それ自身が光合成を行うことにより、
持続可能な原料と言われています。
これらの原料は環境に配慮した画期的なものではありますが、航空燃料として使用するためには十分な量の
確保が必要です。そのため現在は、安定的に原料を集め、製造を行う仕組みづくりが課題となっています。

・SAFの主な製造方法
SAFには「ASTM D7566」と呼ばれる国際規格が存在します。「ASTM D7566」は2022年現在、7種類の製造
方法が承認されており、製造方法に応じて従来の燃料への最大混合率も定められています。
燃料としての特性、安全性は、従来の化石燃料とほとんど変わらないそうです。

・都市ゴミや廃材などをFischer-Tropsch法により製造する方法(FT)
(Fischer-Tropsch法・・一酸化炭素と水素(合成ガス)から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成する一連の過程)
・使用済み食用油や植物油などを水素化処理することで製造する方法(HEFA)
・バイオマス糖などのアルコールから製造する方法(ATJ)
最も普及しているのが、使用済み食用油などを水素を使って製造する「HEFA」方式です

~SAFの課題~
製造コストが高い・・・従来の燃料コスト100/Lに対し200~1600円/Lと割高になっている。
安定的な原料の調達が難しく、生産体制や技術が構築されていない。    など

・世界の動向
アメリカでは・・2050年までに、航空部門で使用される燃料すべてSAFに置き換える目標としています。
EUでは・・・・・2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロを目指すため、SAFの導入促進を行っています。

・国内の動向
日本では・・・・2030年までに、国内の航空会社が使用する航空機の燃料のうち10%を、SAFに置き換える
ことを目標としています。
日本はSAF確保のための取り組みが大きく出遅れており、国内での生産は、ほぼゼロ、現状SAFの調達を輸入に
頼っている状態です。このほど全日空はSAF燃料を使用した定期便(東京⇔福岡間)の導入を始めました。
ヨーロッパではSAFの使用を義務化する動きも出始め、SAFを給油できなければ、海外航空会社の日本への運航
便が減らされる恐れもあります。
SAFの安定的な調達で、従来燃料からの置き換えが進むためには、国産化が必要とされます。
前述の2社は、国際民間航空機関(ICAO)がCO2排出量を2019年より増やさないルールを敷き、2027年に義務化
される方針との発表をうけ、商社は原料の調達や航空会社への販売を担い、石油元売り会社は生産を担当し、
2027年にもその体制を構築することを目指しています。

この取り組みなどにより、日本は国産のSAFを、世界に輸出できる原油国になれるかもしれませんね(?)